KPI設計とダッシュボード活用|設計編:KPI定義と期待値の明確化
- 石山 竜也
- 2025年12月31日
- 読了時間: 5分
【導入】
KPI設計とダッシュボード活用は、単なる数字管理ではありません。プロジェクトの未来をデザインし、意思決定の質を高めるための「技術」です。
KPIは、現場の状況を見える言語に変換し、チーム全員が同じ方向を向くための羅針盤として機能します。
しかし現場では、
形だけのKPI
飾りになったダッシュボード
報告会で終わるレビュー
こうした「形骸化」が頻繁に起こります。その原因はシンプルで、
KPIが現場で使える設計になっていない
運用が意思決定につながる形になっていない
からです。KPIは作ることが目的ではなく、動かし、意思決定につなげ、成果へ変えるための仕組み です。
この記事では、YouTube動画の内容に沿って
「設計 → 導入 → 定着」 の3ステップのうち、まずは 設計フェーズ(KPI定義と期待値の明確化) を深掘りします。
1. KPIとは何か(KPIの本質)
KPIとは 重要業績評価指標=成功を測る物差し です。
プロジェクトの状態を、誰が見ても同じ基準で判断できるようにするための「共通言語」。
感覚や経験ではなく、数字という客観的な言語で現状を捉えるための仕組みです。
ただし、ここで重要なのは、KPIは数字そのものが目的ではない、ということ。
数字は、意思決定を支えるために存在しています。
KPIの本質は、
問題の所在を明確にする
リソース配分を判断する
リスクの優先順位を決める
といった 意思決定の基盤 になることです。さらにKPIは、プロジェクトの方向性を示す「羅針盤」でもあります。
複数の課題が同時に存在する中で、
今、何を最優先にすべきか
どこに力を注ぐべきか
何を守り、何を捨てるべきか
この優先順位を揃える役割を果たします。
2. KPI設計の目的(なぜ設計が必要なのか)
KPI設計は、単に数字を決める作業ではありません。
プロジェクトを成功に導くための「土台づくり」です。
目的①:成果とプロセスを両面で測る
成果だけを追うと疲弊し、
プロセスだけを追うと「やっている感」だけが残る。だからこそ、
成果指標(結果)
プロセス指標(行動)
この両方を測る必要があります。成果は「何が起きたか」。
プロセスは「なぜそうなったか」。
この2つが揃って初めて、改善の打ち手が見えるようになります。
目的②:チーム全員の共通認識をつくる
プロジェクトには異なる視点が存在します。
開発:技術リスク
営業:顧客との約束
マネージャー:リソース
経営層:ROI
この「バラバラの視界」を揃えるのがKPIです。KPIが明確になると、
会話が揃う
判断が速くなる
無駄な衝突が減る
チーム全体が同じ方向へ進み始めます。
目的③:改善サイクルを回す基盤をつくる
KPIは報告のための数字ではありません。
KPI → ダッシュボード → アクション → 再設計
このサイクルが回り始めると、
プロジェクトは「改善し続ける組織」へと変わります。
数字を見る → 問題に気づく → 手を打つ → 改善される
この循環が自然に生まれる状態が理想です。
3. SMART基準:動くKPIをつくる設計思想
SMART基準は、KPIを“動かす”ための設計思想です。
Specific(具体的)抽象的なKPIは機能しません。
例:
×「品質を上げる」
○「レビュー指摘の再発率を月5件以下にする」
Measurable(測定可能)
測れないKPIは存在しないのと同じです。
データソース
測定方法
測定頻度
担当者
ここまで明確にして初めて「測れる指標」になります。
Time-bound(期限がある)
期限がないKPIは永遠に後回しになります。
例:
×「不良率を下げる」
○「今期末までに不良率を3%以下にする」
SMART基準が揃った瞬間、KPIは数字から、行動を変える仕組みへ進化します。
4. 成果指標とプロセス指標(守りと成長の両輪)
成果指標とプロセス指標は対立するものではありません。
どちらも必要で、役割が異なります。成果指標=守り
納期遵守率
ROI
不良率
外部への約束を守るための指標。
プロセス指標=成長
レビュー実施率
進捗報告率
問題を起きる前に気づくための早期警報装置。
PMOが目指すべきは、
短期的な成果 × 長期的な改善 の両立です。
5. 期待値との連動(KPIは期待値の翻訳装置)
プロジェクトが止まる最大の原因は、
スキルでもツールでもなく 期待値のズレ です。
経営層はスピード
現場は品質
クライアントは成果の早期化
どれも正しい。
しかし揃っていなければ、判断は揺れ続けます。
成功基準の共有
「何を成功と呼ぶのか」
これを揃えるだけで、迷いが激減します。
KPIは期待値の「翻訳装置」
経営層 → リリース日
現場 → 品質指標
クライアント → 中間アウトプット
期待値とKPIが結びつくと、判断基準が揃い、意思決定が速くなります。
優先度の調整
複数の「正しい優先度」をPMOが調律し、全体最適へ導くことが重要です。
【まとめ】
KPIは数字ではなく、プロジェクトを成功に導く“意思決定インフラ” です。
成果とプロセスを測り
チームの視界を揃え
改善サイクルを回し
期待値を統一し
優先度を整える
これらが揃ったとき、プロジェクトは自然と前に進み、成果が積み上がっていきます。
次回予告(導入フェーズ)
次の記事では、「KPI設計とダッシュボード活用|導入フェーズ:測定方法とダッシュボード活用」
を解説します。
KPIを“測れる状態”にするデータ設計
ダッシュボードを意思決定の武器にする方法
レビューを“報告会”から“判断の場”へ変える仕組み
設計編でつくったKPIを、いよいよ“現場で動かすフェーズ”に入ります。
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